龍がいる
デカ盛りの圧倒的攻撃力
イーサンは、送られてきたボイスレコーダーの再生スイッチを押した。
KP(Kochi Portal)本部からの指令だった。
「おはよう、イーサン君。
南国市に『りゅうたん』と呼ばれる謎の中華組織がある。
なんでも尋常ではない量の定食を出しているらしいが、君のように、いつも一般的な量を食べている、いわゆる普通の人間が果たして完食できるのかを調査する。
それが今回の任務だ。
食べ切れなくても限界まで食べてもらうため、相当に危険な任務になると予測される。
だが、たとえ君が捕えられ、もしものことがあっても当局は一切関知しないからそのつもりで。
なお、このボイスレコーダーは5秒後に自動的に消滅する。健闘を祈る」
再生が終わった直後、ボイスレコーダーは煙をモクモクと上げて燃え尽きた。
どういう字を書くのかと調べると、"龍"に"潭"と書いて『龍潭(りゅうたん)』と読むらしい。
龍の淵か
もしかすると
龍に食べられるのは
私かもしれない
龍潭の人気メニューでデカ盛りの「りゅうたんB定食」を食べきれるのか?
所在地 | 〒783-0004 高知県南国市大そね甲1705-8(地図) |
営業情報 | 営業時間:11:00~14:30,17:00~L.O.19:30 定休日:火、水(不定休:有) 駐車場:3台(狭いので注意) |
席 | カウンター:無 テーブル:有 座敷:有 お子様メニュー:無 |
龍の口の中へ
「龍潭」の店内は
入口の印象よりも広い
目的は
「りゅうたんB定食」
それが龍潭で屈指の人気をほこるデカ盛りメニューだと、当局から聞いていた。
現れたその定食は、見るものを圧倒する迫力だった。
B定食
目の当たりにしたB定食は、とても一人前に思えなかった。
驚愕のあまり、自分の瞳孔が開くのを感じた。
イーサンは、すぐさま組織に提出するためのボイスレコーダーに声を吹き込んだ。
酢豚
野菜なんて飾りですよ。
そう言わんばかりに大きな肉がゴロゴロ入っている。
唐揚げ
少年の夢みたいに大きい。
食べると、内部に閉じ込められた肉汁がジュワジュワあふれ出してくる。
鶏もも肉は、やわらかくてプリップリの食感だ。
卵焼き
さすがは、この南国の地で何十年も営業を続けられてきたお店だ。面構えが違う。
豚と鶏
肉の海だ
とくに少食ではないが
大食漢でもない
イーサンには
完食が厳しい量だった
イーサンの意識は
朦朧としていた
だいぶ朦朧としていた
唐揚げと白飯を
交互にいく
日本の幸せが
ここにある
だが苦しい…
苦しい…
もう食べられない…
おいしいけど…
もう食べられない…
頭が真っ白だ…
私の負けだ。
イーサンは、1/3ほどの量を残した時点で白旗を上げた。
子どもの頃からお残し厳禁の家庭で育った彼は、皿の上に料理を残すことがどうしてもできなかった。
満腹を抱えて困り果てるイーサンの目に飛び込んできたのは、救世主からのメッセージだった。
テイクアウト!
そういうのもあるのか!
お店のかた「おひとつで大丈夫ですか?」
組織に提出するのに必要なテイクアウトの画像を撮るのも忘れて、そそくさと店をあとにした。
テイクアウトしたら
家ごはんのおかずにもなる!